この光

 昨日退院しました。あんなに恐れていたのに、手術は終わり、今は紫外線よけのサングラスで綴っております。まだ目の中に痛みはあるし、白目も赤いのですが、生まれて初めて、矯正用のメガネなしでPCに向かっています。
 世の中の健康な人は、こんな風に世界が見えていたのね、と、不思議な感慨にとらわれました。見えない、耳鳴りが途切れない、歯が抜けていく、全身の関節が固まりつつ、可動域は小さく、もう、なにもかもどうでも良くなっていたけれど、見えるだけで、おおきく違ってきました。
 福祉関係の人等から、「健康なのにサボっている」系の罵詈雑言を浴びて、人間のなにもかもがいやになっていたのに、目が見えると、他人が許せるんですね。
 「この光と闇」の「レイア」のように、見えることの感動と見え続けて見えてきた苦しみを、私も体験するのかしら。この小説の作者が、もうこの世にいない、本当に寂しい。感想を書いて送ってみたかった。

−引用−「この光と闇」より 

 低く降りてゆけ、ひたすら降りて
 永遠なる孤独の世界
 世界でない世界、まさしく世界でないものに向かってゆけ
 内部の闇

T・S エリオット『四つの四重奏』より
千葉文夫 訳