イチャモン

 私のやることなすことに「イチャモン」を付けたいタイプについて、何度も考えてしまう。年齢も性別も地域も違っていて、シチュエーションも多岐にわたるが、人生に於いて、かならずいつも、ひとりふたり、いるのだ。
 ネットでもリアルでもちょっと人に言えないような、卑猥で低俗で、それでいて、誰かが見とがめるような大きな言動はしないが、上手に私を怒らせる。本当に感心する。
 そして相手の側に立って想像する。なにが癇に障るんだろう…こちらはなるべく相手にしていない人に多く、数年ぶりに会ったりすると親しげで、おのれが私から嫌われるようなことをした記憶もなさそうだ。
 なかには、学生の時、私の書いた物が読み上げられたときに、なにか一言皮肉を言う子とか(笑  あれはなんだったのか、頭はよく働くのに、身体は重くて、動けず、目も見えづらく、歯は次々抜けるか欠けて、目が覚めるときは耳鳴り、なにもできない故に余計に考えてしまう。

 男性に多いのが「フン、気取りやがって」で女性に多いのが、「比べる」そそしてイチャモンを付ける。そういうときは大抵、私はその対象を消してしまう。デッサンがうまく描けていて、それをみていた友だちが、文句を付けると、「あっそ、じゃ消すわ」と消しゴムで、相手が気に入らなさそうな部分を丸ごと消す。相手が驚いて目を見開く。離れていくのを待って、また好きなように書き直す。最初に書いた物ほど好きになれない。

 運動でも、日常的な仕草でも、勉強でも。大人になって嫁に行って、プチ家出をしてきた母が「あんたは短い髪が似合う」といつまでもいつまでも言いつつづけるので、ベリーショートに切ってしまった。後に「切ったのか」と驚く母、「私は短いのが似合うんでしょ」と答えると、二度と言わなくなる。すっきりする。
 ファッションや化粧、手作りのお菓子に至るまで、私の目線からは「意地の悪い」言動をする人に対して、そうした「対抗」をし続けた。振り返ればくだらないとおもう。
 それなのに、ネットで知り合った人に対しても、同じことをし続けている。写真や詩、掌編、たとえ褒め言葉でも「こうなんでしょ」「ああなんでしょ」と知ったようなことを言われると、消す、変える、わざと汚くする。わざとブスに化粧したり、ネット詩風つまらない言葉の羅列をしたり。言われたとおりに書き換えたり、書き換えたことを咎められて、原文が思い出せないので丸ごと消したり。褒められた行為では無いが、今でも気持ちが良い。